小林泰三「殺人鬼にまつわる備忘録」
読み切るつもりはなかったんですが、あまりの面白さに一気読みでした。
小林泰三さんは「玩具修理者」、「アリス殺し」などが有名で、作品も多数ありますが、とにかく文章が簡潔で読みやすいのが特徴です。
このお話は田村二吉という、数十分しか記憶を維持できない男が主人公。そのため、生きる上で必要なことを全てノートに書き出し、記憶を無くす度にノートで状況を把握して行動しています。
二吉はとても頭が良くて、記憶を失う度にちゃんとノートを見て状況を把握して、的確に動けるすごい人なんです。
ノートには「今、自分は殺人鬼と戦っている。」と書かれていて、最終的にはその殺人鬼と対決するのだからほんとにすごい!
元々ホラー作家だからということもあり、殺人鬼の殺人描写はほんとに……グロさもさることながら、「殺人鬼、ほんとに許さん!」って気持ちになります。
殺人鬼には特殊な能力があって、他人の記憶を改ざんできるんですけれど、その能力を悪用して平気で殺人を犯す悪の塊のようなヤツなんです。
ほんと毎回出てくる度に胸糞悪いことするので、気付けば全力で主人公を応援しながら一気読みです。
小林泰三さんのお話を読み慣れている方なら、他作品とキャラクターが重複していることに気づくかもしれません。結構そういう遊び心のある作家さんで、ついつい他の作品も読みたくなるんですよね。
今回の主人公も、違う作品「忌憶」の中に登場しています。
それにしても、文句なしに面白かった!
前半の何気ない伏線がラストで爆発して、えー!ってなりましたよ♪
ハラハラドキドキのミステリーが好きな方にオススメの一冊です。